検査・検証の必要性

社会人デビュー以来、検査とか検証という業務に携わることが多く、現在も2本の検証を担当している。
#ほかにも仕事あるけど。
以下の本田のインテリジェントキーの件は、想定の範囲内なのか範囲外なのか…
過去にさかのぼって改修できないような致命的な想定外の現象が意図も簡単に発生してしまうということは、開発者にとって致命的とも言える。
幸いなのは、高級車に主に採用される機能であり、白物家電に搭載されるような機能ではなかったということである。
これがもし白物家電に搭載されるような機能であったならば、末代に渡って『あそこの製品はちゃんと試験をしていない云々』と語り継がれ、大幅な売り上げ減となることもあったかもしれない。
トヨタヴィッツやラクティスが採用しているようにボタン式にしていたのは偶然なのか、トヨタの技術者にとって今回の現象は想定内だったのか…

なんにせよ、よく試験をし検証を行うということは重要である。その際に、試験のコスト、期間とのトレードオフももちろん重要である。いかに効率よく、想定外の範囲の発生確率のσを向上させていくか、品質工学は奥が深い。
学生時代にもうちょっと勉強しとけばよかった。

余談だが、電波をあまりやっていない人は周波数が違えば干渉しないと思っていることがしばしばある。
そんなことはなくて、multi path*1, fading*2, spurious*3など、自然界を取り巻く電波環境の変化によってさまざまな電波の変動要因が発生し、思わぬ現象を引き起こすことは常に想定しなければならない。

昨今、電波の重要性が増してきている割には電磁気工学に長けた学生はどんどん減っている。携帯電話の流行によってOFDMCDMAなどの変調・多重化方式を学びたいという人は増えているが、経験上、しっかり電波をやっている学生は少ない。
#もちろん教えている先生方は非常に電波に詳しいのだけど。

今後、電子機器の検証をする方はしっかりいろんな工学的事象を念頭に入れて想定外の現象がなくなるように最大限努力してもらいたいものだ。もちろん自分もだけど。

自動車用最新型キー:トラブル続発で採用中止 ホンダ

 無線を使ったホンダの自動車用最新型キーで、誤作動のため利用者が外から車に入れなくなるなどのトラブルが続発したため、同社が9月からこのキーの採用を取りやめたことが分かった。人の手をまったく使わず施錠できる業界最先端のシステムだったが、それが逆にあだとなってしまった。

 トラブルを起こしたのは、厚さ数ミリのカード型「スマートカードキー」。利用者のポケットなどに入っていれば、キーから出る電波を自動車が受信して自動的に認証を行う仕組み。乗車時はドアのハンドルを握るだけで解錠され、降車時はドアを閉めて車から離れれば勝手に施錠される。他メーカーのリモコンキーの場合は、施錠にはドアのボタンを押すなどの人手による作業が必要だが、ホンダの技術ではそれが不要で、より自動化が進んだ最先端のシステムとされていた。

 02年からオデッセイやアコードなど新車の一部に標準装備され、希望者向けには3万〓7万円のオプションとして販売された。現在約18万3000人が利用している。ところが昨年後半以降、携帯電話などの電波の影響で、キーを車内に置いたままでも、降車してドアを閉めると施錠されてしまうケースが続発。いったん施錠されると中から解錠することはできず、専門の業者を呼んで開けるまで、人が車内に閉じ込められる騒ぎまで起きた。従来型のキーも装備され、このキーを使えば開けられるが、カードキーの利用者は、従来型キーを携帯していないことが多く、出先で困りはててしまうという。

 このため、同社は9月に一部改良して発売した最上級車「レジェンド」から、利用者がドアのハンドルに触れなければ施錠できない仕組みに変更。自動車の安全性には問題ないため、リコール(回収・無償修理)には該当しないが、同社は今春から、利用者全員にダイレクトメールでトラブルが起きていることを通知した。ただ技術的な改修は難しいため、メーカーとしては注意を呼びかけるラベルをキーに張ることしかできず、対応に苦慮している。【山本明彦】

毎日新聞 2005年10月16日 3時00分

*1:電波の経路変動や変化による干渉

*2:電波の伝搬経路上のパラメータ変動による電波強度の変化

*3:高調波、デバイスの状態変化などによる電波のずれ、歪